1対1の練習を、より実戦的にする工夫 −第145号−

技術レベル:★★★☆☆
前回の内容を少し復習してみましょう。
【1対1の練習の効果とは?】
まず、「1対1の練習と、試合での1対1は別物である」ということを認識することが大切です。
その上で、1対1の練習で身に付くものと、身に付かないものを理解することで、1対1の練習を試合で活かせるようになるのです。
一般的な1対1(※)の練習で身に付くのは、相手を抜くスキルやボールを奪われないスキル、身に付かないのは、状況判断を伴ったプレーになります。
(※一般的な1対1・・・相手と正対し、一度パス交換してから1対1をスタートする練習)
・・・と、ここまでが前回の内容でした。
今回は、1対1の練習を、より実戦的なスキルを高められるようなメニューにアレンジすることを考えてみましょう。
<例1.オフ・ザ・ボールのスキルを身に付ける>
試合での1対1は、ボールを持ってからヨーイドンではありません。
オフェンスは、できるだけディフェンスを引き離してボールを受けようと考えています。
ディフェンスは、逆にオフェンスとの間合いを詰めようとし、あわよくばパスカットすることを考えています。
このように、ボールを受ける前から、すでに勝負が始まっているのです。
このボールを受ける前の駆け引きを、1対1の練習に加えてみましょう。
例えば、こんなアレンジがあります。
オフェンス側にパサーを1人追加し、1対1を行います。
オフェンスは、有利な体勢でパスを受けられるよう、ボールを受ける前の駆け引きを行います。
ボールを受けた後は、通常の1対1になります。
ボール受ける前の駆け引きが上手いプレーヤーは、ボールを受ける前の動きがすでにフェイントになっており、ワントラップで相手をかわすことができます。
ちなみに、元フランス代表のジダン氏は、このようなワントラップで相手の逆を取るプレーが得意でした。
オフェンスは、不利な体勢だと判断したら、パサーにバックパスしてもOKということにします。
こうすることで、勝負を仕掛けるべきか、そうでないかの状況判断のトレーニングになります。
ただし、これだけだとオフェンスが圧倒的有利になってしまいます。
そこで、「3回バックパスをさせたら、ディフェンスの勝ち」というルールを加えれば、緊張感が生まれるでしょう。
<例2.周りの状況を利用するスキルを身に付ける>
試合では、1対1といっても、純粋な1対1という状況は、ほとんどありません。
オフェンスは、味方がサポートに入り、パスコースを作ってくれます。
ディフェンスは、味方がカバーリングに入り、抜かれた後のケアをしてくれます。
試合での1対1は、このような周りの状況も視野に入れながら行われます。
すると、オフェンスは、自分の体を使ったフェイントだけでなく、周りの味方をおとりに使って相手をかわすというプレーも可能になるのです。
この周りの状況を視野に入れる要素を、1対1の練習に加えてみましょう。
例えば、こんなアレンジがあります。
ミニゴールを2つ設置した状態で1対1を行います。
オフェンスは、どちらのゴールを選んでもOKです。
この練習では、オフェンスの圧倒的有利な状況になります。
オフェンスは、一方のゴールを狙うと見せかけ、DFがつられたら、もう一方のゴールへ向かえば、簡単にゴールを決めることができます。
このスキルは、試合でどう活きるのでしょうか?
例えば、サイドでボールを持った時、オーバーラップしてきた味方に相手がつられたのを見計らって、相手の逆を取る。
センターでボールを持った時、サイドに展開すると見せかけ、相手がつられたのを見計らって、センターFWにクサビのパスを入れる。
このように、周りの状況を利用し、相手の逆を取るスキルとして活かすことができるのです。
<例3.目的に応じたドリブルを身に付ける>
サッカー・フットサルでは、ドリブルでプレーが完結することはありません。
ドリブルの後には、必ずパスやシュートといったプレーがあります。
ドリブルとは、相手を抜くことが目的ではありません。
パスやシュートといった目的を果たすための手段なのです。
そして、目的を果たすことができるのであれば、相手をキレイに抜ききる必要はないのです。
例えば、日本代表の長友選手のドリブルは、スピードの緩急を使って、相手との「ズレ」を作ります。
そして、センタリングを上げられるだけの「ズレ」が作れたら、相手を抜ききっていなくても、迷わずセンタリングを上げます。
このような長友選手のドリブルは、目的を果たすためのドリブルの典型と言えるでしょう。
このドリブルの目的を、1対1の練習に加えてみましょう。
例えば、こんなアレンジがあります。
1対1と言うと、ゴール前で行い、ゴールを決めたら終わり、という練習が多く見られます。
これを、ゴール前でなく、自分本来のプレーエリアで行います。
サイドプレーヤーであれば、サイドで1対1を行い、センタリングを狙った位置に上げられたらOKということにします。
この時、ゴール前でセンタリングに合わせてくれるFW役がいればベストですが、いなければ、ボードなどターゲットとなる物を置いてもいいでしょう。
この練習では、オフェンスは、「センタリングを上げること」が目的です。
長友選手のように、スピードの緩急を使ってもいいですし、切り返しを使い、逆足でセンタリングを上げてもいいでしょう。
また、ドリブルを仕掛けると見せかけ、相手がドリブルに気を取られた瞬間に、その場でセンタリングを上げるという手もあります。
オフェンスは、ドリブルで抜くためのスキルではなく、センタリングを上げるためのスキルという、より実戦的なスキルを身に付けることができるのです。
FWであれば、ゴール前での1対1になります。
この場合も、相手を抜くことではなく、シュートを打つことにフォーカスすることで、シュートを打つためのスキルを身に付けることができます。
今回、3つの例を紹介しましたが、これらは、あくまでアレンジの一例です。
ここで紹介したメニューをそのまま実践しても、大きな効果は望めないでしょう。
大切なのは、「自分が身に付けたいこと」を考え、「そのためには、1対1をどうアレンジするべきか?」を自分で考える事です。
結局、上達する人というのは、自分で考える人なのです。
上達には、「自分で考え、実践する」ことが不可欠!!
この情報を、自分で考える上でのヒントにしていただければ幸いです(^−^)
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