1本の縦パスの効果を高める方法 −第160号−

技術レベル:★★★☆☆
サッカーには、「くさびのパス(ポストプレー)」という攻撃戦術があります。 (フットサルでは「ピヴォ当て」) 非常にシンプルな戦術ですが、その効果を理解して使うことで、非常に有効な攻撃につながります。 今回は、「くさびのパス」の有効な使い方について見ていきましょう。
そもそも「くさび」とは何でしょうか? 「くさび」とは、大きな石を割るときに割る面に打ち込むV字型の木片や鉄片のことです。 このくさびを起点にすることで、硬い石が割りやすくなるのです。
サッカーにおける「くさびのパス」とは、相手守備陣の深い所にいる味方FWの足下へ縦パスを入れ、そこを攻撃の起点にし、相手の守備を崩していくという戦術です。
このパスが通ると、相手はパスを受けたFW(ポストプレーヤー)に対してプレッシャーをかけに行かざるを得ません。 なぜなら、そこから前を向いて突破されれば大ピンチになるからです。 相手守備陣は、ポストプレーヤーに前を向かせないよう、ポストプレーヤーへのプレッシャーを厳しくし、その周りのスペースを埋めようとします。 必然的に相手守備陣の意識はポストプレーヤーに集まるため、他の味方選手へのマークにずれが生じます。 <図解−1>
また、ポストプレーヤーからリターンパスを受けたプレーヤーは、相手守備陣の深い位置で前を向いてボールを持つことができます。 リターンパスを受けたプレーヤーは、自分でシュートを打つこともできれば、マークが甘くなった味方を使って相手の守備を崩すこともできるのです。 このように、くさびのパスは、シンプルですが、非常に効果的な攻撃戦術なのです。
では、この一連の流れをスムーズにするためのポイントは何でしょうか? 私は、3つのポイントがあると考えています。 1.パスの出し手のスキル 2.パスの受け手のスキル 3.3人目の動き出し
【1.パスの出し手のスキル、2.パスの受け手のスキル】
まず、くさびのパスを入れる段階では、パスの出し手と受け手のスキルが必要になります。 パスの出し手には、受け手がパスを受ける準備が整ったのを見極め、足下に正確なパスを通すスキルが求められます。 パスの受け手には、出し手がパスを出せる準備が整うのを見極めて動き出し、相手DFをブロックしながらボールコントロールするスキルが求められます。
【3.3人目の動き出し】
いくらパスの出し手と受け手のスキルがしっかりしていても、一連の流れにこの2人しか関わらなかったらどうなるでしょうか? ポストプレーヤーからリターンパスを受けたプレーヤーは、自分でシュートするか、自分でドリブル突破するしか、相手を崩す選択肢がありません。
ここで思い出してもらいたいのが、くさびのパスが通ったときの相手守備陣の反応です。 くさびのパスが通ると、相手守備陣は、ポストプレーヤーに前を向かせないよう、ポストプレーヤーへのプレッシャーを厳しくし、その周りのスペースを埋めようとします。 必然的に相手守備陣の意識はポストプレーヤーに集まるため、他の味方選手へのマークにずれが生じます。
この時、マークが甘くなった3人目のプレーヤーが動き出すと、フリーでパスを受けることができ、相手の守備を崩すことができるようになります。 つまり、一連の流れに3人目の動きが加わることで、攻撃のバリエーションが一気に広がるのです。
例えば、中央でくさびのパスを通した場合、リターンパスを受けたプレーヤーには、次のような選択肢があります。(※あくまで一例です) 1.中央へのスルーパス 2.サイドへのスルーパス 3.自分で仕掛ける
<図解−2>
また、サイドでくさびのパスを通した場合、リターンパスを受けたプレーヤーには、次のような選択肢があります。(※あくまで一例です) 1.ゴール前へのセンタリング 2.逆サイドへの展開 3.自分で仕掛ける
<図解−3>
このように、くさびのパスを有効な攻撃につなげるためには、パスの出し手と受け手だけでなく、その周りのプレーヤーの動きが非常に重要なポイントなのです。 そして、効果的な動き出しをするためには、ボールを持っていない時に何を考えているかがポイントです。 ボーっとするのではなく、くさびのパスが入った場合、どこに、どのように動くのかを考えておくのです。
3人目の動きは、一見ただ走りこむだけのように見えますが、プレーヤーが持っているアイディアの種類が反映されます。 例えば、サイドプレーヤーがサイドに広がってパスを受けようとする動きは、ほとんどの人が思いつきます。 しかし、アイディア豊富なプレーヤーは、サイドからダイヤゴナルの動き(※)をして、中央でスルーパスを受けるというような動きもします。(※)ダイヤゴナルの動き・・・フィールドを斜めに横切ることで、相手DFのマークに捕まりにくくする動き 3人目の動きをするプレーヤーのアイディアが、攻撃のバリエーションを決めるのです。
サッカー・フットサルでは、走るコース1つにこれだけ頭を使います。 だから面白いんですね。 常に先のことをイメージしていれば、相手の裏を取ったり、相手の先手を取ることができます。 相手を崩す動きや華麗なパスワークは、このようにして生まれていくものなのです。
上達には、「自分で考え、実践する」ことが不可欠!!
この情報を、自分で考える上でのヒントにしていただければ幸いです(^−^)
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