基礎戦術に潜んでいる危険性 −第115号−

技術レベル:★★★★☆
基礎戦術を覚えたとたん、自分で考える事を放棄してしまう人がいます。
「基礎戦術ではそうなっているんだから、その通りにプレーしていればいい」と・・・
しかし、実際の試合は、教科書どおりに行かないのが常です。
時には、基礎戦術を無視して、自分の直感に従って動いた方が、効果的なプレーになることもあります。
そもそも基礎戦術自体が、『「どうすれば効率よく得点できるか」、「どうすれば効率よく守れるか」を考え、体系化されたもの』なわけです。
この定義に基礎戦術が当てはまらない場面で、基礎戦術に従って動くことは、判断ミスであると言えるでしょう。
結局、試合中の判断は、自分と相手の力関係を読み取り、自分自身で決めるしかありません。
「基礎戦術でそうなっているから」、「他人から言われたから」で判断するのではないのです。
例えば、攻撃で、相手よりもあなたの方がスピードで勝っている場合、ボールを持ったら、スピード勝負のドリブル突破が有効になると考えられます。
逆に、あなたよりも相手の方がスピードで勝っている場合、スピード勝負では勝ち目がありません。
それなら、どうしたらいいでしょうか?
例えば、ボールを持ったら一度止まることで、相手の足も止めることができます。
そこから、フェイントなどの技術勝負を仕掛ける、という選択肢が考えられます。
また、オーバーラップや壁パスなど、味方とのコンビネーションを使って突破する、という選択肢も考えられます。
あなたがサイドハーフだったとして、監督やチームメイトから「ウチは、サイドバック(以下「SB」)のオーバーラップを使ってサイド攻撃をする」と言われたとします。
しかし、あなたとマッチアップする相手が、あなたよりも足が遅く、1対1のディフェンスもそれ程強くないプレーヤーだったら、どうでしょうか?
(1)1対1で突破すればチャンスになる場面でも、あえてSBが上がってくるのを待ちますか?
(2)それとも、自分の判断でドリブル勝負を仕掛けますか?
この選択の基準となるのは、「(1)=チームの形を重視する」のか「(2)=試合の結果を重視する」のかになります。
サッカー・フットサルというゲームの原理から考えれば、(2)の選択の方が正しいのではないかと、私は思います。
もちろん、この選択も自分自身の判断ですから、その結果については、自己責任ということになりますが・・・
同様に、守備の場合も考えてみましょう。
相手よりもあなたの方がスピードで勝っている場合、スピード勝負に持ち込めば、勝てる可能性が高くなります。
それなら、どうしたらいいでしょうか?
例えば、中を切って、縦にしか行けないようにコースを限定すれば、自ずとスピード勝負に持ち込むことができるようになります。
逆に、あなたよりも相手の方がスピードで勝っている場合、スピード勝負では勝ち目がありません。
それなら、どうしたらいいでしょうか?
例えば、マンツーマンでマークに付き、相手にスピードに乗るスペースを与えない、という選択肢が考えられます。
また、チーム戦術の関係でマンツーマンができない時は、相手にスピードに乗らせないよう、通常よりも間合いを遠く取る、という選択肢が考えられます。
監督やチームメイトから「ウチの守備は、コースを限定し、サイドでボールを取る戦術だ」と言われたとします。
しかし、相手チームに、ものすごく足の速いウイングがいたとしたら、どうでしょうか?
サイドへボールをボールを追いやれば、自ずと俊足ウイングにボールが渡ることになります。
それでも、チームの形に従い、サイドへボールを追いやりますか?
それとも、相手の俊足ウイングにボールが渡らない工夫をしますか?
上達のために、色々な知識や技術を身に付けることは大切です。
しかし、体系化された知識や技術は、ともすれば、自分で考える事を放棄してしまうことになりかねません。
これらの知識や技術は、もともとは「試合に勝つため」に考え出されたものです。
その原理原則を忘れて使うと、致命的なミスにつながる危険性を秘めているのです。
昔の話になりますが、2002年日韓W杯の準決勝(ブラジル対トルコ)で、ブラジルのロナウド選手は、トゥーキックでゴールを挙げました。
ロナウド選手のトゥーキック
「シュートは、インステップキックかインサイドキック」という考えに凝り固まっていた私は、一瞬何が起こったか理解できませんでした。
リプレイを見て、その発想に衝撃を受けたのを今でも覚えています。
サッカー・フットサルというのは、手以外ならどこを使っても良いスポーツです。
「試合に勝つ」というシンプルな考えに基づいて考えれば、もっと自由な発想ができるのではないでしょうか。
上達には、「自分で考え、実践する」ことが不可欠!!
この情報を、自分で考える上でのヒントにしていただければ幸いです(^−^)
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